[ 広がっています、急須茶生活。]

いろんな人に、いろんな場所で。広がっています、急須茶生活。

vol.10 久保田 晴司 さん(久保田美簾堂 店主)

京すだれ本舗・久保田美簾堂
創業は1883年(明治16年)。130年の伝統を誇る老舗の簾・竹工芸品の専門店。神社・仏閣で使われる御翠簾のほか、一般家庭用の内掛簾、外掛簾などさまざまな製品を取り扱っています。ニューヨークにあるメトロポリタン美術館では、日本ブースの模様替えの際に久保田美簾堂の御簾が使用されるなど、海外でもその名を知られる名店です。
住所:京都市下京区東洞院通仏光寺
下ル高橋町615
Tel.:075-351-0164
営業時間:9:00~18:00
休:日曜・祝日

淹れる人や淹れ方によって味が変わるおもしろさが急須茶の魅力だと思います。

 1883年創業以来、京都の竹を使った簾(すだれ)をひとつひとつ丁寧に作り続けてきた老舗・久保田美簾堂。現在、五代目である久保田晴司さんは当時から変わらぬ手仕事をいまに伝えています。ひと口に簾といっても、設置する場所や主な用途などによって、寸法や素材選びが変わってきます。そのため、お店に来られたお客様との商談は、そうした点やお好みなどを伺うところから始まります。

 商談の際、久保田さんはお茶をお出しするようにしているのだといいます。理由は、ゆっくりお茶を飲みながら、商品の話だけでなく世間話やお客様の趣味とか生活の話をすることで、お客さんの好みを理解するためです。「やっぱり本物の竹を使った手作りの簾は、なんといっても10年、20年使っていただくものです。その方の生活を具体的にイメージしてお作りさせていただくのが私らのつとめだと思うんです」

 ご自身もお茶を学んでいらっしゃるという久保田さん。ペットボトルのお茶はほとんど飲んだことがないのだとか。「急須で淹れるお茶の良さは、淹れるたびに味が違うことですね。同じお茶は二度と淹れられません」。この言葉には、オーダーを受け、ひとつずつ手づくりで簾を作り続ける老舗五代目としての思いも重ねられているのかもしれません。
 「たとえばお店に3人いるときは、3人で飲むのにベストになるように湯温とか湯量とか茶葉の量とかすべて計算して淹れますよね。そしてそれが思い通りに美味しいお茶になるとそれはもうものすごく嬉しいものです。一日それで機嫌がいい、みたいなね。ところが、同じように3人分淹れていたら急にひとり帰ってきて、4人分淹れないといけなくなるとそれはもう悔しいですよ(笑)」。

 既製品ばかりが流通するいまの時代こそ、淹れる人や淹れ方で味の変わる急須茶の魅力を、多くの人に知ってほしいという久保田さん。「高いお茶でも淹れ方を間違うと苦くなります。湯温や茶葉、お道具も含めて好みの味を見つけられることが急須茶のいいところです」。久保田さんは、慈しむように鉄瓶の掛けられた火鉢に手を置きながら静かに語ってくれました。

戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加