晩秋から冬にかけて「お芋さん」の美味しくなる季節。海老芋と北海道の棒鱈を組み合わせ作る煮物を京の地で根付かせたのが「いもぼう 平野家本店」。京都のハレの日の献立として食されつづけている伝統の「いもぼう」の味わいを訪ねました。
地下鉄東西線「東山」駅を南に歩くと知恩院の雄大な三門が現れ、さらに円山公園に向かって知恩院南門をくぐれば、すぐ右手に「いもぼう 平野家本店」があります。川端康成の小説「古都」や松本清張の「顔」のなかにも登場するという歴史ある佇まいです。
いもぼうの食材のひとつ海老芋は、平野家の先祖、粟田青蓮院に仕えていた平野権太夫が宮様の九州行脚に同行し、その際に持ち帰った唐伝来の芋です。現在の円山公園の一角で栽培したところ、この土地風土に適したのか海老に似た見事な芋が収穫できたそうです。もうひとつの食材棒鱈は、海から遠く隔たった地理にある京都では、海産物は塩漬けや乾物に加工され届き、塩鯖、ニシン、昆布などとともに珍重された食材でした。さまざまな貴重な食材を調理する試行錯誤を経て、海老芋と棒鱈を組み合わせ煮る「いもぼう」にたどり着いたのです。この2つを合わせて煮ることで、海老芋は棒鱈の成分によって煮くずれしにくく味をしみやすくさせ、海老芋のアクが棒鱈を柔らかくするという予想もしない相乗効果を発見しました。
遠く離れた九州と北海道、山の物と海の物、この2つの出合いは、互いの性質で個性を引き立たせあい、しっかりと京都の地に根付き、300年の伝統を今に伝えているのです。
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いもぼうに使われる海老芋の旬は11月から4月、冬の季節の食べ物です。お店は年中無休で営業していますので、海老芋の旬以外の時期は、小芋や里芋に変わります。それぞれに味わいがありますが、やはりいもぼうは、木枯らしが吹く季節に海老芋で味わっていただきたいもの。
丁寧に皮が剥かれた規則正しい包丁目がついているのに、お箸がすーっと入ってしまうほどに柔らかく、また口に運ぶとしっとりとなめらかな食感に驚きます。そして、 滋味深い味わいにほっと安らぎを覚えます。優しい歯ごたえを残した棒鱈も、煮汁の旨みを含んでホロホロと美味しくいただけます。
一番だしに薄口醤油と砂糖で煮た海老芋と棒鱈、一見素朴なお料理ですが、かたく乾燥した棒鱈を一週間水につけて戻し、海老芋と一緒に銅鍋で20時間以上煮て味を含ませる、とても手間暇のかかる料理です。京都でも、今では若い世代の食卓にはなかなかのぼることのない食材となりましたが、おせちと同様、ハレの日のご馳走として食されています。
冬枯れの円山公園、知恩院の散策の折には、出合いの妙、300年の歴史ある京都の味わいを「いもぼう 平野家本店」で楽しまれてはいかがでしょうか。
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