北野天満宮の南、西陣と呼ばれるエリアの一角に、今から400年余り前の天正年間から作り続けている「長五郎餅」が店を構えています。あんを羽二重餅で包んだ、多くの人になじみの深い和菓子の元祖はこの長五郎餅であるといわれるほど。その歴史と味わいを訪ねました。
長五郎餅の由来は、天正15年(1587年)、豊臣秀吉が公家や諸侯を集め、北野天満宮で大茶会を催したときにさかのぼります。その茶会で河内屋長五郎が羽二重餅にあんを包んだ餅を献上したところ、秀吉に気に入られ「以後は長五郎餅と名乗るべし」と言われたのです。
当時の人々にとって、しっとりとしたあんを真っ白な羽二重餅でくるんだ、上品で甘い餅の味は驚きであり、たいそうな喜びであったことでしょう。その評判はしだいに人々に広がり、地元の人はもちろん、北野天満宮に参拝に訪れた人々が長五郎餅を求めるようになりました。
やがて、北野天満宮に訪れた参拝者の休憩所として境内で商うようになり、今も北野天満宮の縁日や参拝者の多い時期には、境内、東門内で出店しています。
北野天満宮の境内にある茶店は、お正月1月1日〜1月4日、1月〜3月梅の咲く時期の土・日・祝日、そして縁日の開かれる毎月25日が営業日です。限定の営業日ですが、長五郎餅を求めて観光客や参拝客が大勢訪れます。
昔ながらの風情がある茶屋で、赤い敷物をかけた長椅子に腰掛け、昔懐かしい七輪で暖をとっていると、遠い昔にタイムスリップしたような気持になります。長五郎餅のしっとりしたあんのほどよい甘さが口のなかでほどけ、冬の寒さで冷えた体に元気をくれることでしょう。北野天満宮に詣でた際はぜひこの茶店に足を運ん400年前、初めて口にした太閤秀吉の驚きと喜びと重ねて味わってみてください。