京都市内、烏丸御池の交差点にほど近いところにあるのが創業寛正6年の「本家 尾張屋」。暖簾をくぐると、目抜き通りの喧噪は消え、趣のある静かで落ち着いたしつらえが迎えてくれます。
蕎麦の歴史は、鎌倉時代、京都・東福寺を建立した禅僧・聖一国師(しょういち こくし)が、中国から唐菓子や蕎麦切りの技術を京都に持ち帰ったのが始まりです。粉を練り、延ばして切る技術に長けた菓子職人によって受け継がれ、蕎麦や蕎麦菓子はお寺や宮中に納められていたことが当時の文献に残っています。また、京都の都は海に遠く、新鮮な海産物を手に入れるのが困難。そのことがだしに欠かせない乾物の技術・文化を育みました。さらに、三方を山に囲まれた京都は、ミネラルが豊富な天然水・地下水に恵まれています。天然水でだしを取るとうま味成分が出やすく、昆布やかつお、あじ、さば、うるめ、めじかなど、さまざまなうま味を活かしただしの文化が発達したのです。蕎麦に欠かせないつゆは、京都ではだしを効かせた味が特徴です。
京都では蕎麦は馴染みがないと思う方も多いかもしれませんが、お茶をもたらし茶の湯文化を支えた、禅僧、水、菓子職人は蕎麦文化を育む要素でもあったのです。
重ねられた5段の「わりご」は、京漆器の老舗「象彦」のデザイン。小ぶりとはいえ、5段分の蕎麦は食べ応えがあります。薬味は海老のあられ揚げ、椎茸、錦糸玉子、紅葉おろし、ごま、ねぎ、海苔、わさびの全部で8種類です。好みの薬味をのせ、徳利に入っただしをかけていただくので、1段1段違った味を楽しめます。だしはめじか、さば、うるめ、利尻昆布でとった京風の味。複雑なうま味が重なり合って、できたてのコシのある蕎麦の風味をさらに引き立てています。締めくくりには、桜の塩漬けを浮かべた香り高いそば湯をいただきましょう。
都会の喧噪から遮断された落ち着いた空間は、京都を堪能できる味と歴史と気配りがあります。ぜひ一度お立ち寄りください。
つなぎに小麦粉を使い、たっぷりの蕎麦粉と砂糖、卵でつくるシンプルな焼き菓子です。 手打ち蕎麦の技法で生地を薄く延ばし、一文字釜と呼ばれる鉄板で一枚いち枚丹念に手焼きされています。香ばしくて優しい甘さの蕎麦板は昔懐かしく素朴な味なので、ついもう一枚と手がのびます。
どんなお茶にも相性はぴったりですが、夏にこそ温かい京番茶や玄米茶で召しあがってはいかがでしょうか。 |