株式会社宇治田原製茶場 月刊 茶の間

トップ > 京の食

京の食 春・夏・秋・冬と京都のおいしいお店を紹介します。 2011冬

バックナンバー

京菓子司 亀屋粟義 茶房「加茂みたらし茶屋 」

京都市左京区下鴨松ノ木町53 TEL (075)791-1652 営業時間:9:30〜19:30 定休日:水曜日

下鴨神社の神饌、白い団子がルーツ。

京都の北、下鴨神社の近くにお餅の焼けるおいしそうな匂いが漂う一角があります。そこは下鴨本通と鞍馬口通の交差点を少し上がった(北に進んだ)ところ、京菓子司 亀屋粟義の茶房「加茂みたらし茶屋」です。大正11年に下鴨神社門前で創業した京菓子 亀屋粟義は、みたらし団子を神饌(神様へのお供え)として奉納されていました。そして昭和38年、茶房「加茂みたらし茶屋」を始める際に、神饌の白い団子に、とろりと甘いタレをかけて「加茂みたらし団子」として販売するようになったということです。

この加茂みたらし団子は何とも不思議な形です。五十串(いそぐし)と呼ばれる串に5つの団子をさしてあるのですが、1つ目の団子から少し離して4つ並んでいます。
女将さんに伺うと、「下鴨神社の糺(ただす)の森に「みたらしの池」と呼ばれる池があります。葵祭の行事で『斎王代(さいおうだい)』が禊(みそぎ)をするところでも有名ですね。その池に水の泡が1つ浮き、しばらくしてブクブクと3つ4つ湧き出た様子を形取ったのだと言われています。もう1つ言われがあるんです。5つの団子が五体(人間の体)を意味していると。日本には厄を払う行事で、人形(ひとがた)を人間に置き換えて、祈祷を受けたり、水に流したりする行事がありますが、この団子もそのような人形と同じ役割を果たしていました。ですから、団子を神様にお供えして祈祷を受けた後、家に持ち帰り、いただく習わしがあったのです」と教えてくださいました。

黒砂糖のコクとほのかなしょう油の風味が素朴な味わい。

早速できたてをいただきました。火であぶって軽く焦げ目のついた団子にとろりとした黒砂糖の甘いタレがたっぷり。しょう油のほのかな風味が、黒砂糖のコクのある甘さを引き立てて、とても美味しいです。小ぶりのスプーンが添えられていて、タレをたっぷりと団子にかけて食べることができるのも嬉しい心遣いです。
この日も、絶えることなくお客さまが来られたり、お土産用にと観光バスまで配達を依頼する電話が入ったりして、たくさんの方々が「加茂みたらし団子」を求めておられました。バスの中はこの美味しい匂いでいっぱいになって、みなさんきっと我慢できすに食べちゃうな…と、想像しました。
下鴨神社への参拝の際には、ぜひ「加茂みたらし茶屋」に立ち寄り、この由来に思いを馳せながら召し上がってみてはいかがですか。

●店頭では懐中しるこやおかきなども販売されています。●お持ち帰り用、10串入り1050円。竹の皮で包んで三角形に包装、風情がありますね。包装紙には京都をイメージした絵が描かれています。

「鳥彌三」

京都市下京区 木屋町通四条下る TEL (075)351-0555 営業時間:11:30〜22:00
*お弁当など昼食メニューのみ16:00まで。*20:30までにご入店ください。定休日:不定休 ●築200年の歴史を感じさせる建築。

由緒ある有形文化財の建物と秘伝の味。

高瀬川沿いを南北に走る木屋町通りは、繁華街の雑踏と、京都のはんなりとした風情が混ざり合う観光スポットです。その通りを四条通りから下がる(南に進む)と、左に折れれば鴨川にかかる団栗橋に続くという交差点にさしかかります。そのすぐそばに西暦1788年(天明8年)創業当時の姿を残す歴史ある佇まいの鳥彌三(とりやさ)があります。
打ち水で清められた玄関から、暖簾をくぐると江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える空間が迎えてくれました。

仲居さんの案内で通された座敷は、春を待つ落ち着いたしつらい。雪見障子越しに、団栗橋を行き交う人の姿や、鴨川に飛来した冬鳥の飛び交う様子などが見え、お鍋の用意が整うまでのひととき、さりげない景色が少し特別なものに感じるのが不思議です。

水炊きが出来上るのを待つ間、先付と前菜を楽しみます。先付は肝煮。特製の醤油で煮た鳥の肝はとても上品なお味で鳥の肝のイメージが嬉しく裏切られる逸品です。前菜は旬の食材を使た季節の味わいで献立されています。今回は水菜のおひたし、鯛の小袖寿司、松葉に車海老と黄身の練玉をさしたもの、穴子しんじょう、菜の花などが美しく並んでいます。目も舌も満足する季節の味わいに、繊細で秀逸な職人の技を感じました。

ひとつ一つの食材を吟味したこだわりの「水たき」に舌鼓。

お鍋の具材のなかで、青々とした野菜が目を惹きます。京野菜の「京菊菜」です。一般にはあまり流通していませんが、夏の盛り以外の季節には可能な限りこの京菊菜を提供しているのだそうです。他にも京都の地下水を汲み上げて作っている豆腐、引き上げ湯葉、毎日おもちを搗いて作る自家製の切り餅など、それぞれ食材にはこだわりがあります。

とてもいい匂いが漂い始めました。煮立ったところで、まずスープをいただきます。白く濁ったスープはトロリとしていて、鳥のうま味やコラーゲンがギュッと凝縮されているかのよう。深い濃厚な味わいですが、あと口はさっぱりとしています。この鍋のスープは鶏ガラを3日間煮続けて完成させるのだそうで、当主と何人かの板場さんでしか作るのを許されない、秘伝のスープだということです。そして、熱々の鶏肉を自家製のポン酢と九条ネギ、さまざまな種類を調合した一味をお好みで加えて味わいます。しっとり柔らかく肉が口の中で溶けるようです。白菜、京豆腐、切り餅、椎茸、京菊菜、湯葉は、食材ごとに煮えるタイミングが違いますが、すべて仲居さんにお任せ。

おしゃべりに夢中になっても美味しいタイミングを逃すことがありません。
〆のお雑炊でおなかもいっぱいになりました。至れり尽くせりのサービス、板前さんの食材へのこだわりの集大成のあつあつの水炊き。そして仲居さんと料理や食材に始まり、観光スポットのアクセスを訪ねたりと様々に広がるおしゃべり。そのすべてに癒された思いがします。外の冬景色とは裏腹に、身も心もぽかぽかと温かく、心地よいひとときを堪能しました。

冬枯れの京都、観光の折にはぜひ、心も胃袋もあったかくなる「水炊き」をご賞味ください。