緑に抱かれるような南禅寺境内の一角に佇む白壁と茅葺き門。暖簾をくぐり、水を打った石畳のアプローチから、古民家と数寄を融合させた雅趣溢れる建物へと導かれます。
こちらのお店の歴史は古く、現在の無隣庵のある場所で初代、丹後屋治兵衛が精進料理の店を開いたのがその始まり。その後、寛永12(1635)年に、現在の場所に移り、当初は南禅寺のお坊さんのための精進料理を提供していましたが、水の良い京都でおいしい豆腐料理が広まったことから、ゆどうふの専門店へと変遷し、今に至っています。
現在、16代当主が暖簾を守り、清らかな京の水、大豆、天然のにがりでつくる昔ながらの豆腐づくりを続けています。そのおいしさは、多くの人々の舌を唸らせ、今もたくさんのお客さんがこちらのゆどうふを目当てに訪れてきます。
網代天井の下、落ち着いた風情の座敷に背の低い独特の卓が並び、その上には七輪。鍋の蓋を開けると、真っ白な豆腐が美しく並び、その清らかな風情に思わずためいきが・・・。独自製法の豆腐は、絹と木綿のちょうど間の質感で、しっかりとした食感とつるりとなめらかな喉越しを楽しめます。
「南禅寺など東山散策の折りにぜひお食事にお立寄りいただいて、ほっと一休みなさってください」と同店の桜井寿子さん。
代々の当主に伝わる秘伝中の秘伝の京都らしい上品なだし、薬味の九条ねぎと七味。たったそれだけのシンプルな組合せが、えもいわれぬ風味を醸し、ただうっとりとその滋味に浸る・・・。時折、庭の木々から鳥の声が響きわたり、まるで桃源郷に座しているような気分。
春のうぐいす、夏の蝉、秋にはキンモクセイが香り、そして冬には雪色の風情。四季折々、それぞれの魅力がありますが、なんといっても、ゆどうふの楽しみが増すのは寒い冬。
粉雪が舞う戸外から温かな座敷に招かれほっと一息。ガラス戸から冬の風情を眺めつつ熱いお酒を一献。そして、ふうふうとゆどうふに舌鼓を打つ・・・。なんという贅沢、なんという幸福。
品書きは、おきまりの『ゆどうふ一通り』のみ。その潔さにも長い歴史に裏打ちされた風格を感じます。
胡麻豆腐、とろろ汁、木の芽田楽、精進揚げといった精進料理に通じる奥深い味わいの数々が、ゆどうふと絶妙の相性を見せ、お腹も心もゆっくりと満ち足りてきます。四季折々、時が移ろう中に息づく一筋の美味を、風雅な空間で心ゆくまで味わってみてください。
【住所】京都市左京区南禅寺福地町86-30
【電話】075-771-8709
【営業時間】平日11:00~16:00(日曜・祝日~16:30)
【定休日】木曜
【料金】ゆどうふ一通り3,150円(税込)
【電話】075-622-6908
【営業時間】平日17:00~23:30(LO22:30)、
日曜・祝日17:00~22:30(LO21:30)
【定休日】月曜
【料金】おでん1品105円~、
おでんおすすめコース2,100円(税込)
【HP】http://www.bengaraya.net
杉板の板塀が独特の風情を見せる、酒どころ伏見の町。その一角の町家から漂う、なんともおいしそうなだしの匂いに誘われて、夕暮れ時、お客さんが三々五々集まってきます。
こちらのお店はおでんの専門店。父、池田裕さんが丁寧に取った野菜のだしに、息子の赳彦さんが鶏ガラ、くじらのコロから取っただしをそれぞれブレンドして、秘伝のだしを仕上げます。
「母方の祖父がやっていた料理屋で人気だったロールキャベツのレシピを、母から僕へと受け継いで、アレンジを加えて看板料理にしています」という名物和風ロールきゃべつをはじめ、くじらのコロ、練り物、大根、牛すじなどを大鍋でぐつぐつ炊く風情は、見ているだけで食欲をそそります。
ボリュームのある和風ロールきゃべつは、ジューシーな合挽ミンチの中に、シャキシャキのくわいが絶妙の食感。あちちっ、とほおばれば体の芯から温まってきそう。ひと巻きずつ丁寧に巻いた一切れだし巻きは、だしのコクがしみて、ほっこりまろやか。鶏つくね、自家製練り物のほか、レタスや菊菜をさっとだしに通した青菜など、個性溢れる具材をあれこれ食し、最後の締めは小鍋で黄麺を煮立ててどうぞ。
温かな卓を囲んで、おでんをつまみつつ、わいわいと賑やかに過ごす夕べはいかがでしょうか。

和風ロールきゃべつ 525円
同店の名物人気具材ナンバーワン。
しみ出る肉汁がたまりません。
京都の料亭として名高い『和久傳』。そのおもたせ部門として1995年に出来たのが、『紫野和久傳』です。お弁当のお持ち帰りから始まったおもたせも徐々に品数が増え、甘味のおもたせも数多く扱うようになりました。
ここ『紫野和久傳』堺町店には、そんなおもたせで人気の甘味をはじめとして、料亭ならではの旬の食材で作る季節の菓子や、厳選素材で丁寧に手作りされた甘味を扱う茶菓席が設けられています。
元は呉服問屋だったという立派な町家を入り二階に上がれば、外観からは想像の出来ないサロンのような空間が。このように本格的な茶菓席があるのは『紫野和久傳』でも同店だけ。実はここでしか味わえない甘味がたくさんあるのです。
堺町通りに面した『紫野和久傳』堺町店。一階にはおもたせの売り場があり、二階の茶菓席や奥の料亭で食事をした後、買って帰られるお客様も多いとのこと。
『できたて本わらび餅』も同店ならではのメニュー。わらび餅と言えば、ぷるぷるして冷たい夏のお菓子というイメージですが、このわらび餅は「できたて」。なんと、柔らかいわらび餅をスプーンで掬っていただくのです。
口に運べば熱々のわらび餅がなんだか新鮮。一般的なわらび餅とは違いとろ〜りとした食感で不思議な舌触りに魅了されます。
わらび餅の下には小豆が隠れていて、一緒に食べれば新しい味わい。小豆が甘さ控えめの素朴な風味なので、合わさってちょうど良い甘さです。一緒に付いてくる和三盆糖蜜は同店で作っているもので、かけて食べればまた違う印象が。セットの宇治抹茶も口の中をさっぱりさせてくれていい相性。
京都散策の途中、お茶に立ち寄るも良し。奥には料亭もあるので、お昼を料亭でいただき、その後こちらでくつろぐも良し。くつろぎの空間でほっこりしたひとときをお過ごしください。
【住所】京都市中京区堺町通御池下ル東側
【電話】075-223-3600【定休日】無休
【営業時間】1階おもたせ・10:30~19:30
2階茶菓席・11:30〜18:00(L.O.)
【料金】できたて本わらび餅1,050円(税込)

モダンな茶菓席。季節によってしつらえのお花などが変わる、心配りも素敵な空間です。
注文を受けてから練って作られるとろ〜り伸びるわらび餅。こんなわらび餅見たことない!よく伸びる熱々のうちに召し上がれ。セットには和三盆糖蜜と、抹茶がついてきます。
茶葉を粉にして、沸騰したお湯を注ぎ、茶筌で泡立てていただくという独特な飲み方の抹茶。その抹茶法を日本へ伝えたのは、臨済宗の開祖として知られる栄西禅師でした。約800年前の鎌倉時代、中国での修行中、お茶の健康作用に感激し、粉末にして飲むという抹茶法と茶の種子を日本へ持ち帰って栽培したことがきっかけとされています。この後、栄西禅師からお茶の種子を譲り受けた京都・栂尾高山寺の明恵上人が、寺に茶園を開いたことが本格的なお茶生産の始まりとなりました。
明恵上人は、茶の種子を栂尾高山寺に植えた後、茶の栽培に適した土地を探しては種子を蒔き、熱心に栽培方法を指導し、宇治の地に辿り着いたと言われています。
宇治は京の都に近い上、宇治川の深く立ち込める川霧が茶を霜害から守り、日光を和らげるという自然風土が茶の育成に適していたのです。
そして室町時代になると、時の将軍・足利義満がこの宇治茶の栽培を奨励し、室町幕府の御用茶園「宇治七茗園」を定めたことで名声を高め、宇治は天下の茶産地として大きく発展していったのです。
さらに茶業家たちは、茶栽培に適した豊かな気候風土に甘えることなく、常に品質向上を目指して努力し、創意工夫を重ねました。中でも特筆すべきは、茶園の「覆下栽培」の考案です。
この覆下栽培は、新芽の収穫が近づいた頃、藁やよしずで茶園全体を覆う栽培法で、茶摘みまでの20日間以上、太陽の日差しを遮断します。日光を遮ることで、新芽が柔らかく育ち、色も鮮やかに、そしてお茶の旨みのもとであるテアニンも多く蓄えられるのです。この画期的な栽培方法により、さらに良質な味へと向上していったのです。
肥培管理が徹底された茶園で、覆下栽培で育てられた茶葉は、「碾茶」と呼ばれる抹茶の原料になります。碾茶はある程度、葉を大きくしてから適採するのが一番良いとされています。煎茶は小さい先端の若芽の方が香りも味も良いとされていますが、碾茶はその状態だとやや強い味が出てしまいます。そのため、葉の状態がある程度大きくなった方が、まろやかで良質な碾茶がとれるのです。特に高級宇治抹茶は、その一番良い瞬間を逃さず摘んだ若芽の一番茶葉だけを厳選して使用しているのです。
丁寧に摘み取った茶葉を蒸気で蒸した後、乾燥させると碾茶ができあがります。碾茶は玉露や煎茶のように、「揉み」の工程がないのが特長です。さらに茎や葉脈などを取り除き、約5ミリ角に切断した葉だけを石臼でゆっくり丁寧に挽いて微粉末状に仕上げたものが宇治抹茶となるのです。変色しないよう、熱を加えずにゆっくり挽いていくため、一時間に挽ける量は、わずか約35グラム。それだけに抹茶は高級で希少なものなのです。
栽培、原料、技法。歴史に裏付けられた伝統が脈々と息づいている奥深い宇治抹茶。「抹茶といえば宇治」と言われる所以は、こうしたところにあるのです。

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