[ イベントレポート ]

こいまろカフェと京都芸術デザイン専門学校 共同企画 新しい「急須&湯呑デザイン」の発表会が開催されました。 2015年1月30日

急須&湯呑デザインのプレゼンテーションの様子

 前回お伝えしました京都芸術デザイン専門学校とのコラボレーション企画「急須&湯呑デザイン」開発プロジェクト。いよいよ学生たちの作品が完成し、2015年1月30日に発表会が開かれました。若い感性を活かしたユニークな急須から、本格的で実用性の高い急須まで、さまざまな工夫を凝らした作品の数々。プレゼンテーションの模様と各賞の受賞者をあわせてご紹介いたします。

アイデアの萌芽、続々登場!

 12月19日のオリエンテーションからお正月を挟んでわずか一か月と少しという限られた時間のなかで、学生たちはふだん使い慣れていない急須と湯呑に真剣に向き合いました。お茶や茶器の歴史を探ったり、家族に意見を求めたという学生もいれば、とにかく自分でお茶を何度も淹れたりと、いろんな試行錯誤を経て今日を迎えたのだといいます。
 総勢32人の学生たちは、自作の模型やイラストなどを用いて審査員に自分の作品をプレゼンテーションしました。こうした本格的なプレゼンテーションは今回が初めてという学生たちも多く「とても緊張した!」「たくさんの人の前で発表できてうれしい」といった声が聞かれました。
 審査員には宇治田原製茶場・代表取締役社長で茶師の安井徳昭はじめ、清水焼作家で伝統工芸士の八木海峰氏、大日本印刷のプロダクトディレクター北山晃一氏を迎えたほか、当日はこいまろも審査に参加。学生たちの作品に対し審査員らは「どれも面白くてレベルが高く、最優秀作品を1点に絞るのが難しい」と話していました。
 発表会当日は地元のテレビ局や新聞社の取材陣も駆けつけ、学生たちの作品やプレゼンテーションの模様が広く紹介されました。こうした伝統を新しい世代に伝えていこうとする取組みへの関心の高さをあらためて感じました。

急須&湯呑デザインのプレゼンテーションの様子

5名の受賞者と作品をご紹介いたします!

急須&湯呑デザイン開発プロジェクト 最優秀賞

『おいしいお茶を淹れるゾウ』

京都芸術デザイン専門学校
1年生 安田 明香 さん

作品

子どもたちにもお茶を楽しんでほしい!

「子どもでも親しめる急須」をコンセプトに制作しました。自分が最優秀賞をいただけるとは思っていなかったので、いままでの人生の中でいちばんビックリしたと同時にとてもうれしかったです。かわいいデザインにすることでお茶が苦手な子どもにも楽しくお茶を飲んでもらえるようにと考えました。また、この急須を使った子どもたちが大人になったとき、さらに次の世代に急須の良さを広めていける、そんな急須をイメージして作りました。これを機に自分ももっと急須でお茶を飲みたいと思います。

最優秀賞 賞品

子供に喜ばれる可愛らしいモチーフです。しかも、両手で持てるように工夫され、力のない子供への安全に配慮されています。素晴らしいアイデアです。 茶師 安井徳昭

急須&湯呑デザイン開発プロジェクト プロダクト賞

『伝統工芸を活かした急須』

京都芸術デザイン専門学校
1年生 前田 彩衣 さん

作品

最近の授業で伝統工芸品の勉強をしていたことがアイデアのヒントになりました。もしかしたら自分は才能がないのかなと少し自信を失っていましたが、今回このような賞をいただけてすごく励みになりました。

今回の受賞で自信がつきました!

陶器・竹細工・耐熱ガラスといった様々な素材の組合せが、魅力的ですね。 プロダクトディレクター 北山 晃一

急須&湯呑デザイン開発プロジェクト プロダクト賞

ちゃばな

京都芸術デザイン専門学校
1年生 養覚 真知 さん

作品

お茶の木や葉っぱではなく、あまり知られてない花を使おうというところから発想しました。今回はじめてプレゼンテーションを経験し、審査員の方に見ていただけたのはすごくモチベーションになりました。

制作の苦労が報われました!

お花をモチーフに、インテリアとしても非常に美しい作品に仕上がっています。 プロダクトディレクター 北山 晃一

急須&湯呑デザイン開発プロジェクト 伝統工芸賞

『JR奈良線』

京都芸術デザイン専門学校
1年生 大門 暢平 さん

作品

日本緑茶発祥の地である宇治田原やブランド品である宇治茶の産地、宇治を走る電車をイメージして作りました。今回、伝統工芸士の方に認めていただいたということで、今後の活動に対して自信につながりました。

友達みんなに自慢したいです!

注ぎ口が笛、持ち手がハンドルなど、デザイン性に長けており、発想が新鮮でした。 清水焼作家伝統工芸士 八木 海峰

急須&湯呑デザイン開発プロジェクト こいまろ賞

『持ちやすさ』

京都芸術デザイン専門学校
1年生 横山 勇介 さん

作品

以前にお茶の体験をさせていただいたときに、取っ手を持つ際に手首を返さなくてはならず持ちにくいと感じ、テーブルが主流のいまの生活には急須の取っ手も下向きの方が持ちやすいだろうと考えました。

実体験をもとに発想しました!

フタが落ちずに片手で淹れられるように、フタの裏にも工夫してくれたっちゃ。 こいまろ

審査員講評

 急須や湯呑は何百年と使われ続けてきたものですから、デザインや形状はある程度完成されたものです。それにもかかわらず、今回学生の皆さんは、様々な可能性があることを示してくれました。
 とくに最優秀賞に選ばれた「おいしいお茶を淹れるゾウ」は、私たちが取り組んでいる「茶育事業」のコンセプトとも合致していて素晴らしいアイデアでした。伝統工芸賞に選ばれた「JR奈良線」も「工芸家には思いつかない発想で、むしろこちらが勉強になりました」と審査員から大絶賛。その他の作品についても、斬新なだけでなく、使い手のことを考えた作品やお茶の文化を理解した作品など、非常にレベルが高いことに驚きました。
 若者は急須茶に関心がないのではなく、知る機会がないだけなのだと感じ、茶育活動の大切さを痛感しました。

審査員講評の様子

審査員

安井 徳昭
茶師 安井 徳昭
宇治田原製茶場の代表取締役社長にして茶師。お客様の声を取り入れ、ブレンドを重ねに重ねて完成させたこいまろ茶の生みの親でもある。
八木 海峰氏
清水焼作家伝統工芸士 八木 海峰 氏
京都府立陶工職業訓練(現・京都府立陶工高等技術専門校)修了、初代加藤如水氏に師事。清水焼作家として国内外を問わずに活躍中。
北山 晃一 氏
プロダクトディレクター 北山 晃一 氏
大日本印刷株式会社包装事業部企画本部在籍。長年にわたり商品開発、マーケティング企画を手掛けてきた。
(公社)日本パッケージデザイン協会 会員
(一財)国際ユニヴァーサルデザイン協議会 会員

「急須&湯呑デザイン」プロジェクトを終えて…

 今回のプロジェクトにあたって考えたのは、あまり奇抜すぎても商品化できないし、かといって実用性ばかりに走ると面白味に欠けてしまうという点です。とくに彼らはまだ1年生でこうした本格的なプレゼンテーションが初めてだったので、実用性を重視した「レギュラープラン」とアイデア性を重視した「フリープラン」のふたつのエントリーを設けることで、彼らが考えやすいように工夫してみました。
 蓋を開けてみたら私が想像した以上にユニークかつ実用性ある作品が数多く出来上がっていたので、今回の試みは成功だったと感じています。なにより制作を通じて、お茶の持つ「和の心」と向き合い、体感したことで日本の伝統を再発見してくれたことをうれしく感じています。

京都芸術デザイン専門学校 冨永 良子 先生

京都芸術デザイン専門学校外観
京都芸術デザイン専門学校
京都市左京区に位置し、併設校である京都造形芸術大学との連携を含めた、広範囲かつ実践的なカリキュラムが特徴のデザイン専門学校。コースはインテリアデザインのほかにビジュアルデザインコース、コミックイラストコースなど5コースからなり、日本全国から学生が集まり、近年は海外からの留学生も増加している。
住所:京都府京都市左京区北白川上終町3
Tel.:075-722-9231

戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加