[ 広がっています、急須茶生活。]

いろんな人に、いろんな場所で。広がっています、急須茶生活。

vol.6 緒方 芽生さん(料理屋 緒方 女将)

司菜・緒方
四条通りの喧騒からひとつ路地を入り、風情ある佇まいの小路を進むと、司菜・緒方のほのかな明かりが目に入る。日本料理の名店で修業し、和食界期待のホープといわれた緒方俊郎氏が独立、2008年にオープンした名店中の名店。席はカウンターが8席と個室。旬の素材を活かした匠の技は、味にうるさい京の食通をもうならせる。
※写真の湯呑は加賀の陶工・須田菁華によるもの。
住所:京都市下京区綾小路
西洞院東入ル新釜座町726
Tel.:075-344-8000
営業時間:18:00~L.O.21:00
休:月曜不定休

料理人とお客様のあいだで交わされる心の会話をつなぐのが私の仕事です。

 ご主人である緒方俊郎さんが日本料理店を始められたのがいまから6年前。奥さまの緒方芽生さんは、女将としてお店を手伝うことになりました。厳しい料理の世界、それも京都の和食の世界だけに、その苦労は並大抵のものではなかったはず。それでも「無学だった自分が勉強する機会を与えていただき、学ぶことは生涯尽きませんが、一つ一つ大切に自分の人生の深みにしていきたい」と話します。

 京都の日本料理屋であるがゆえお茶とは深い関係にあります。緑茶にお番茶、ほうじ茶と京都には良いお茶がたくさんあるため、たとえばお番茶やほうじ茶はごはんのお茶として、緑茶はコースの最後にお菓子のお茶としてお出しするなど使い分けています。またご自身もお茶が大好きだという芽生さん。「いちばんに注いでいただくよりも三番目の濃いお茶、甘さも渋さもしっかり受け止められるお茶が好きです」。甘みと渋みが融合した絶妙なバランスというのは急須で淹れたお茶でないと味わえないと話します。

 料理屋の女将として、自らの仕事で一番大事なこととして挙げたのが、お茶を差し上げること。料理人の真心を引き継ぐバトンをいただいているという彼女は、たとえ料理が100点でも、自分がどのようにお茶を出すかで減点も加点もあり得る中、唯一加点の可能性を持っているのが「手間」なのだといいます。「手間は愛情」、手をかける愛情。ここに自分の使命があると芽生さんは語ります。

 「お茶は温度が命です。ところが冬などは調理場で淹れてお客さまに出す間にどんどん冷めてしまいます。ですから湯呑や急須をあらかじめ温めておくんです。本来の作法としてはタブーかもしれませんが、作法は作法としてわかったうえで、本当にいまお客さんが求めておられるものをお届けすること。そこに私の「手間」の部分があるのだと思っています。お茶は心でいただくものです」。そう語る芽生さんの言葉が印象的でした。

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